講演会「認知症利用者と家族のアセスメント視点と証明」
| 主催:株式会社日本コンピュータコンサルタント 日時:2011年9月27日(火)14:00~16:20 場所:秋葉原コンベンションホール |
将来、3人に1人が認知症高齢者になると言われている。
介護従事者である私たちにとって、認知症利用者とその家族の生活を支えていく介護のあり方とは、今後どうあるべきか。どの事業者も取り組むべき課題である。
柴田範子氏は、東洋大学准教授でありながら、現在も川崎市で小規模多機能型居宅介護と認知症デイサービスを運営しており、認知症ケアのスペシャリストである。
今回は、「アセスメントの視点」を中心に、具体的な事例を挙げながら、認知症ケアの指針となる考え方や取り組みについて語られた。
下記は、柴田氏の講義内容をSIL編集委員でまとめたものである。
「認知症の患者」ではなく、「認知症をもつ方」としてみる
認知症ケアについては、現在「パーソン・センタード・ケア」の考え方が主流になっている。これは、認知症がその人の一部でありながら普通に生活している「一生活者」としてみていこうという考え方である。
病院でも「認知症の患者」ではなく、「認知症をもつ方」と言われるようになってきた。私も認知症の方への捉え方が変わってきていることを肌で感じている。
私が運営している小規模多機能居宅介護支援「ひつじ雲」では、隣接する会社社長のご好意により、利用者とその家族、ボランティアが集まり、職員は全員出勤して飛行場への小旅行をする機会ができた。
飛行場を訪れると、認知症をもつ方と奥さんからこんな会話が聞こえてきた。「昔よく飛行機で旅行へ行ったよね、お父さん。」「俺、知らねぇ。」
日々の介護の現場では、なかなかこのような交流ができない。しかし、昔を思い出し会話をすることができたのである。
穏やかなかかわりのある家族や職員が相手ならば、認知症をもつ方はよほど重度にならない限り会話ができる。また、急いだり慌てたりせず、じっくり向き合うことで相手は応えてくれるのである。
認知症をもつ方の心理
皆さんに、1つ質問したい。(質問は、永田久美子先生の講義内容から引用)
【問】あなたが全く見ず知らずのところに、ひとりでポツンと置かれてしまって、ここがどこかも分からない状況です。その時、あなたはどんな気持ちになり、どんな行動を取るでしょうか?」
【会場からの回答】
・まず不安になり、そして、ここがどこなのか聞きたい。
・不安で、焦ってパニックになると思う。とにかく家に帰りたいと思う。
皆さんが「不安になる」「パニックになる」と思った気持ちは、認知症を持たれて「私は何かおかしい」「どこかにいくと帰れなくなってしまう」という時の気持ちと同じだろうと思われる。
環境が変わると、まさにそういう状況になる。これが、認知症をもつ方々の特徴である。
本人の根底にある状況や症状を理解する
認知症をもつ方に対し、一般社会でいう「問題行動」だけをみて、それを止めようとしてしまうことがよくある。しかし、認知症を持つ方のアセスメント視点としては、その方の背景に何があって行動が起きているのか、根底にある状況や症状を理解することが大事なのである。
例えば、「パニックになり人に手を挙げてしまう」とか、「人の着ているものを『脱げ!』という」とか、そういった状況になると、介護現場の方はまずなんとか止めなければ、と考え、とにかく「やめて」という行動を取ってしまうことが多い。
普段から利用者さんに対し意識を持ってアセスメントをして、その方の情報を集めて、「これはどういうことなのか」「こういうことかもしれない」「だとしたら、どういった目標を立てて、計画書を作っていくのか」というように考えていく。
もし、考えられる効果が生まれてこない場合は、アセスメントそのものが、実は本来求められているアセスメントの視点でその方を見ていないといえる。今、混乱する現状だけに振り回されていて、その現状だけを見ていることをアセスメントといっているだけかもしれない。
本来見るべきなのは、今のご本人が示している行動を見ながらも、なぜこの人がこういう行動を取っているのか、という視点であり、それを考えながらケアをしていかなければならない。
アセスメントをするためには、認知症の方の特徴はどういうものなのか、どういう疾病からどういう障害を持って認知症になって、この人自身がどういう特徴を持った今の人なのか、ということを捉えることが大事である。
「家族の要望だけでなく、本人にとってどうか」と捉える
訪問介護計画を作るために自社が持っているケアマネジャーが作ったケアプランと訪問介護計画書を並べてみると、見えてくるのは、まだまだ「家族の要望」がケアプランにかなり多く反映させている例が多い。家族が求める介護サービス内容にのみ焦点が当てられている。
当然、家族を支えていく視点は非常に重要である。認知症の高齢者や若年性認知症を持たれている方を支えている家族をも支えていかないと、生活は成り立たない。
しかし、これでは、本来求められているアセスメントの視点が崩れてしまう。家族の言い分をいろいろ聞きながらも、本人にとってどうか、そこを中心にして捉えていくべきである。そして家族が支えていけるためにはどうしたらいいか、在宅事業所もケアマネジャーと同じような目を持ちながら見ていけるということが非常に重要である。
ケアマネジャーに伝える家族の言葉や雰囲気と、ヘルパーに言う家族の言葉とその雰囲気にはギャップがあることが多い。これをどれだけ圧縮させることができるか、この幅を縮めることができるかが皆さんに求められている大事なことである。
これは時間がかかることなので、焦ることはない。
焦ると人間関係が悪くなります。
だから、時間を掛けながら関係性が積み重ねられてきたなと思ったところで、少しずつこちらの思いを伝えていきながら、考えを聴きながら調整を図っていく。
アセスメントの視点とそれらを効果的にするためには、調整能力が必要で、サービス提供責任者や管理者には特に求められる。
(SIL編集委員)


